ついに法廷に立つ…!
ついに法廷に立つ時がやって来ました。
母が。
というのもうちの母は若い時に働いていた工場からのアスベストの吸入により悪性中皮腫を患っており、それに関する訴訟中なのです。
同社からの被害者は複数出ており、集団訴訟の形式が取られています。
弁護士との手続きは父がやり取りしていたのですが、ガンにより亡くなってしまったため、私が細かい点は引き継ぐこととなっていました。
労災は認定済。よくわからないのですが国家賠償請求訴訟は起こしておりません。会社一本で訴訟を行っているのです。
ということで原告へ話を聞く「本人尋問」の日がやってきました。本人尋問対策として担当の弁護士と打ち合わせや練習などを行なってきたので多少は安心か。
しかし問題は被告側からの尋問。勝手なイメージですが、執拗な追求をされ、自分に不利な証言を吐かされてしまうのではないかという不安がありますね。
場所は某地方裁判所。初めて入る場所なので緊張が走ります。
母と連れられてきたのは小さそうな部屋。ここが法廷なのか。
集団訴訟なのでその他の当事者や支援団体の人がたくさんいました。これは心強い。
いざ、法廷へ!
中は思ったより小さい。50平方メートルくらいの部屋でした。私は傍聴席に座ります。
書記官っぽい人がうろうろしています。
…!チノパンに赤シャツ!?
その書記官っぽい人はチノパンに赤シャツ。その上から黒い裁判官用の黒ガウンを着ています。
こんなにラフな感じなのか…。
逆にちょっと気が楽になりました。尋問の対象者となる3人が宣誓書を読み上げます。
宣誓書とは、証人等が嘘を言わないように誓うこと。この儀式を済ましたあとに嘘を言うと偽証罪に問われてしまうという重要な儀式ですね(記憶通りの証言は可)。
以外だったのが、「宣誓書は3人同時に読む」ということ。これほど重要な儀式なのに3人が適当な感じで宣誓書を読み上げています。
本人尋問が始まりました。原告側の弁護士は7名、被告側の弁護士は3名と数では圧倒的に勝っています。
私の座る傍聴席は満席。ほとんどが原告側の人間でしょう。
な、なにぃ!
なんと傍聴席ではサンダルを脱いだり、足をだらんと横に出したりしている人がたくさんいました。こんな怠惰な態度で怒られないのか…?
原告側からの尋問
まずは原告側弁護士からの尋問。これはわけがありません。
事前に渡されていた尋問内容に回答例が載せられた資料を読んでおくだけですから。それでも母が間違ったことを言わないか不安は残ります。
しかし、母が足りなかった言葉は重ねて弁護士が補足して質問してくれます。それに対してはいやいいえで付け加えれば良いのです。
母は工場で働いていた時、直接アスベストに触れる作業をしていましたが、その時マスクや手袋無しで作業にあたっていたといいます。
しかもその姿が当時の会社のパンフレットにのっているという決定的な証拠が…!これはほぼ勝ち。勝ち戦の様相です。
担当の弁護士からは「本人尋問がどうであれほとんど影響はありませんから気楽に臨んでください。」と言われていましたから気は楽です。しかし体がフラフラな母が長時間の尋問で集中力を保てるかが不安点。
被告側からの尋問
原告側の尋問が終わりました。回答は90点といったところか。
このあと本命の被告側弁護士からの尋問に移ります。
…!なぜ!なぜ飲まない…!
打ち合わせでは原告側からの尋問が終わったあと、水分を摂るように勧められていました。30分の長い尋問が終わったあとに休憩を取らなければ集中力を保てないでしょう。
なぜ!なぜ弁護士も勧めないのか…!
こちらの弁護士も何も言いません。しかし私が傍聴席から立ち、手をTの字にして「給水タイムお願いしまーす」とは言えないのが裁判の厳しいところ。
間髪なく被告側からの尋問が始まってしまいました。
おそらく被告側からは母が行っていた作業とアスベストの影響を遠くするための尋問が行われることでしょう。
しかし…、ヌルい…!!
ドラマなどから相手方の尋問はかなり厳しいイメージをしていましたが、今回の被告側の弁護士の態度は何とも優しい、言い換えれば何ともヌルい尋問ではありませんか!
「では…、えー…、」
「質問の趣旨をハッキリしてください!」
こちら側の弁護士から厳しい指摘が入ります。だんだんドラマっぽくなってきましたね。しかし確かに何が聞きたいかがよくわからない。
ここで相手側の弁護士はどんな攻勢に入るのか…。
「そうですか、分かりました。では…、」
こっちの指摘を素直に聞き杉!!
弁護士7名対3名では多勢に無勢か。傍聴席も全て原告側で埋まっているためプレッシャーがハンパない。
それでも被告側の弁護士は別の論点に活路を見出します。
「すでに亡くなった旦那さんのご病気と関連しているということはないでしょうか?」
私の父は数年前に大腸癌が原因で亡くなりました。
母の悪性中皮腫と同様の癌を患っていたら工場とは別の場所で罹患したということに心証を持っていきたいのでしょう。
しかしその思惑は5秒で絶たれます。
「異議あり!大腸癌なんだから全く関係ないでしょうが!」
こちら側の弁護団の一人「初老の白ひげ」が激怒の意義を申し立てます。すると裁判長は…、
「うん、そうね。」
軽い…!圧倒的軽さ…!
被告側の一縷の望みは裁判長の「悪魔の意義受け入れ」によりあえなく失敗しました。
その後はもう何を聞いても仕方ない的な雰囲気と化し、被告側の本人尋問は予定の時間を10分も早く終了しました。
しかし母は長時間の尋問を終えると疲労困憊で退席します。
原告側の弁護士やら支援者やらに「よくやった!こちらの完全勝利だ!」的な雰囲気で迎えられ、とりあえず不安だった本人尋問は事なきを得ました。
今回は第一審。控訴が行われればまた高裁での本人尋問があると思いますので気は抜けません。さっさと和解手続きに進んでくれることを祈ります。
母が元気なうちに訴訟が終わらなければ私が証人尋問に出廷する可能性もあるかもしれませんので…。
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