平成9年12月13日~15日の釣行メモに、こう記されています。
大メダイ×1、良型アカイサキ×1、良型ハチビキ×1、中サバ多数 満足度「2」(5段階評価)そして『海悪により一日延長。』
これはA氏、N氏、R氏、M氏達と伊豆諸島、式根島へ遠征した時の話です。
今ではジェット便(水中翼船)の就航で一泊二日の釣行ですが、以前は船中泊と定宿泊で二泊三日の遠征でした。
今回の遠征は海悪覚悟で、もし釣り船が出ないようなら「民宿中村」で船長(故人)を交えての忘年会ってことにしよう・・・で決行したのです。
予想が的中し、着いた金曜日は強風でとても釣り船を出せる状態ではありません。
そして計画どおり?の忘年会です。
19時の天気予報では、明日も伊豆諸島はシケ模様と伝えています。
TVの天気図を見て船長が、「泊まり代サービスにするから明後日出よう。なあ祐子(奥さんの名)」。
帰りが日曜日になるので、誰も仕事に影響はありませんから全員即OK!
そう決まったら途端にドンチャン騒ぎの忘年会になりました。
翌土曜日は二日酔いがひどく動けない釣友達を宿に残し、残りの数名で地鉈(じなた)温泉へ行きました。
この温泉は、駐車場から急坂の石段を10分ほどかけて下りた磯場に湧き出ている露天風呂です。
12月の海辺はとても寒いのですが、熱い温泉に浸かるのでまったく寒さは感じません。
目線は海面とほぼ同じなので、沖合いから押し寄せる荒波が迫力ものです。
海上には海悪の証の白ウサギの群れが乱舞しています。
「東京便が欠航したらヤバイよマジで」とK氏。
そんなこんなで一日ブラブラし、夕食後早々と・・・zzz。
翌朝、船長が言ったとおり風も無く、お星様キラキラのお空です。
松島丸はまだ暗い5時に離岸、いつもの神津島寄りのポイントへ向かいます。
いよいよ実釣開始!皆、相当入れ込んでいます!
船長をはじめ、だれもがシケ後の荒食いを期待しています。
しかし、意に反して釣れてくるのはサバばかり。
仕掛けがマダイのタナへ届く前にサバが食いついてしまう最悪の状況。
辺りはすっかり明るくなった7時頃、右舷大ドモのR氏の竿に本日始めてのマダイのアタリです。
R氏はようやく食わせたタイゆえ、いつもよりゆっくりとタイの引きを楽しんでいるかのようにファイトしています。
それを見た船長が「大丈夫だからもっと早く巻いて!」と指示します。
しかし、R氏の慎重さは変わりません。
業を煮やした船長「8号のハリスだからガンガン巻け!」と大声でハッパをかけます。
と、くだんのR氏、「ハリスは3号なんだヨ」と今にも泣きそうな顔をしてつぶやきました。
「何!3号だぁ!ダメじゃんかヨ!そんなヤワなモン持ってオレの船に乗るんじゃないヨ!」と怒り心頭。
3号のハリスの外径は0.286mm、船長指定の8号は0.468mmと約2倍も太さが違います。
当然強度も比例して強いので、船長はガンガン巻けと言ったのです。
結果して、ハリス切れで痛恨のバラシに船長は「まったく!魚が散ってしまうっつーの!」
確かに細いハリスの方が魚の食いがいいものです。
食いが浅いときはハリスを細めにするのが常道ですが、いかんせん式根島の沖釣りでハリス3号だなんて・・・温厚な船長でも怒るはナ、これじゃ。
結局誰もマダイをGETすることなく、外道のイサキ、ハチビキ、メダイなどを釣り、10時に帰岸しました。
帰りの船中、船長の「太いハリスでもタイは釣れるからさぁ、絶対8号以上使ってくれよナ。バラして魚が散ってしまっちゃ元も子もないから」。
思い起こせば、これが彼の最後の言葉になってしまいました。
帰りの「かめりあ丸」で、「船長が怒ったとき、オレ5号使ってたんだけど大急ぎで8号に取り替えたヨ」とK氏。
すると、A氏もN氏もM氏も「オレも3号」、「オレ×号」。
ちなみに、ボクは6号を交換せずに通してしまいました。
あいにく8号の持ち合わせがなく、誰かに貰っている現場を船長に見られたら・・・何を言われるかと怖かったからです。
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