第一話の「おおもり丸」で初めて釣ったヤリイカの美味しさが忘れられず、正月用のご馳走に釣りたてのイカ刺と、自家製イカの塩辛を作るつもりで大晦日の早朝、葉山は佐島港「つね丸」の駐車場に到着しました。
まだ4時なのに駐車場は満車状態で、船着場の空きスペースに止められるようにとお店の人に言われ、釣り人でごったがえす中を乗る船を捜しながら車を進めていたところ、やおら窓をたたかれ、キッ!と止めました。
「どこ見てんだ!先はもうないヨ!あっぶないなーモォ!」と窓をたたいた人に言われ、前を見てギョ!としましたよ。
あと50cmも行ったら確実に竜宮城の乙姫様と「ご対~面」となるとこでした。(脇見運転は危険です!)
定刻の5時になり、その年最後の「竿納め」の釣り人を乗せ、まだ真っ暗な海を東に進路をとり、イカのポイントへと向かいました。
30分も走ってスローダウンし、船長は魚探を見ながらイカの反応を探します。
船上では船長の「ハイどーぞ!」の声をいまや遅しと待っています。
イカは足が速く(移動するのが)「ハイどーぞ!」の声と同時に仕掛けを投入しないと、もたついていてはイカの群れが通り過ぎてしまうのです。
東の空が明るくなってきたころ、ようやく「ハイどーぞ!130から120mで反応が出てるヨ」と船長。
各自一斉に仕掛けの投入です。
あちこちからシュルルル・・、シャァー、とリールからラインがオモリに引かれて出ていく音が響き渡ります。
指示されたタナ(魚泳層)でシャクリを繰り返しますが、誰にもアタリがありません。
ようやく仕掛けがタナになじんで、シャクリを5~6回しかしてないのに「ハイ上げてー!」の声。
船長は魚探とにらめっこしながら船を100mくらい走らせては急停止。そして「ハイどーぞ!タナはさっきと同じ!」の繰り返し。
これは、イカの群れが泳いでくる前へ前へと待ち伏せする釣り方なのですが、ときとしてイカは右へ左へと急旋回してしまい、空振りすることが多いんです。
すっかり明るくなってしまいましたが誰にも全く釣れません(イカ釣りでは乗らないと言います)。
船長はこのポイントを諦めたようで、「ハイ上げてー!ちょっと走りますからキャビンに入っててぇー!」
船は全速力で波を蹴立てながら更に東に向かいます。
ボクは朝が早かったからでしょうが、キャビンでコックリコックリと船を漕いでいたようです。
エンジン音が静かになり、周りの人たちの動きでハッと我に返りました。
キャビンから出て回りを見渡すと、近くに見慣れた島が・・・「大島じゃん!」
そう、着いたところは伊豆大島のすぐ傍のポイントだったのです。
間もなくして船長の「ハイおまたせしました。やっていいよー。タナは200~180m!」
「えっれー深いなー!130号のオモリでいいのかなぁー?船長ぉ~」と言うボクの隣の人に船長は「みんな同じオモリだから大丈夫だヨー」。
さあー釣りの再開です。
シュルルーとラインが出ていきます。
カウンターはどんどん数をきざんで150mに近くなってきます。
そこでボクはン?とヤな予感がしたのです。
あと10mも出すとラインが無くなるのでは・・・・?
なっなんと「エッ!ラッ!ラインがぁー!」
そうです、イカのタナに届かないのです。
リールにはテトロン糸(強くて伸びがない)のライン200mに先糸として、ナイロン糸を20m巻いてあるからギリギリセーフと思っていたのです。
が、いつだったか、アジ釣りに行った時、後ろの人とオマツリ(仕掛けやラインが絡み合ってしまう)して、船のスクリューにラインを20~30m巻き込まれてしまったことを思い出しました。
タナが合わなければ、どんな名人でも、どんな立派な道具をもってしてもイカは釣れません。
で、キッパリと諦めました。
あとは帰港するまでの間、フテ寝を決め込むボクでした。
でも、ほとんどの人がボーズだったのがせめてものなぐさめか・・・(やな性格)
大晦日の大掃除をサボってカミさんに嫌味を言われての釣行、バチが当たったとしか言えないのがなんともみじめな「竿納め」となりました。
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